ゆとりと笑顔を!
          教職員がいきいきと働き続けられる学校の創造を


         ― 中学校爆破予告事件に関する緊急声明 ―

                 10月29日  長野県教職員組合執行委員会

 県内の中学校教諭が在籍校に対して爆破予告電話をしたことで威力業務妨害の罪で起訴され、10月16日、執行猶予付きながら懲役刑の判決を受けました。また、県教育委員会は本日、同教諭を懲戒免職に処しました。同教諭の行為そのものは教育公務員の信用を失墜させるものとして決して許されるものではありません。しかし、長野県教職員組合執行委員会は、本人をそのような行為に駆り立てた勤務状況などの背景が、本県の教職員をとりまく現状を象徴するものとして重く受けとめ、ここに緊急声明を出すものです。
 私たち教職員は、子どもたちの成長を願い、日々、教育活動に精励しているところです。ところが、県教組が6月から7月にかけて行った勤務実態調査では、休憩・休息時間も十分とれず勤務場所での時間外勤務や持ち帰り仕事が常態化し疲れ切った教職員の姿が浮き彫りになっています。その実態は、週40時間という法定労働時間を大きく超え、県内教職員の平均で週19時間49分、月79時間16分の超過勤務となり、厚生労働省が昨年2月に通知した「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」の中で業務と発症との関連が強いと判断される数値基準として示した月80時間のいわゆる「過労死ライン」に迫る深刻なものです。
 また、県教組が昨年2月に行った部活動指導に関する調査でも、95%の教職員は部活動が子どもたちの成長に寄与しているととらえ、指導が「やりがいになっている(14%)」という声がある一方、「やりがいはあるが負担になっている(64%)」「負担が大きく本務に支障がある(38%)」(以上複数回答)と教職員の仕事への影響を危惧する声も少なくありません。
 今回、事件を起こした本人も学級担任、生徒会活動さらには未経験な部活動を担当し教育活動に励んでいたものの、休日にも出勤するという状態で仕事をこなそうとし苦悩した様子がありました。結局、苦しさから脱却する行為が犯行に走らせたと推測できます。心身の疲労が限界状態の教職員が少なからず存在することも考え合わせると、今後も精神的に追いつめられ深刻な事態を生じかねないことが懸念されます。
 文部科学省は、教育基本法の見直しを十分な国民的議論をせずに推進していることにも見られるように、現在の深刻な教育困難の原因は明らかにせず、その責任を子ども自身、そして、教職員や家庭、地域に転嫁し、国民が社会の変化に対応することで問題の解消を図ろうとしています。教職員に対しては成績主義賃金制度を根本にする「教員評価」制度導入や官制研修の押しつけである「10年経験者研修」「英語教員研修」導入等で、なおいっそう教員統制を強めるとともに個人の責任での問題克服を迫っています。また、学校五日制とともにスタートした学習指導要領も文科省自身の迷走する「ゆとり」教育の方針のため、現場の多忙化に拍車をかけています。県教育委員会は、こうした教育現場を支援し教職員を励ます施策が不十分で、今回の事件の背景になっている多忙化を解消する具体策を長年示せないで「放置」している責任は大きく問われるべきであり、また、当該校の校長も勤務状況を適正化する努力が足りなかったと言わざるを得ません。
 県教組は、何よりも子どもたちとじっくり向き合える時間と場の創造を保障する視点に立ち、超過勤務によりゆとりが奪われないために、日々の実践に活かすため学校における研究体制の抜本的な見直し、子どもたちに文化・スポーツ活動を保障するという教育基本法・子どもの権利条約からみた「部活動」のあり方の検討を現場の意見を集約しながらすすめていきます。また不要不急の仕事を大胆に見直し、学校外部からの業務依頼や学校内外から求められる提出書類の厳選と簡素化など努めていきます。これらを具体化していくために、私たち自身も教育活動・業務を通して創意工夫を出し合い、教育困難は仲間の支え合いがあればこそ立ち向かえることができることをお互いに確認しつつ、いきいきと働ける学校づくりに、子どもたちや保護者・地域の皆さんと連帯し全力でとりくみます。