政府・与党は7月26日、参議院本会議において「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(イラク特措法)の採決を強行し成立させた。「戦争のできる国づくり」を狙った有事法制関連三法を強行採決した後、さらに国会を強引に延長して、日本の将来を左右するほどの重要法案を十分な審議もしないまま政府・与党が数の力で採決を強行したことに対して厳しく糾弾するものである。

 このイラク特措法には、二重三重の大きな問題点がある。
 第一に、表向きには「人道復興支援」を唱えながら、実際の内容は米英軍への占領支援がなされることである。飲料水・食料等の輸送や道路等の建設などの任務があるものの、武器輸送や戦車・戦闘機への給油はまさに戦闘支援であり、国際法上は同盟軍とみなされるものである。現地の民間支援団体は「迷彩服を着た自衛隊がイラク入りすることは、民間支援の妨げになるばかりか、自衛隊員の身の安全上問題である」と指摘している。しかし、政府・与党があくまで自衛隊派兵にこだわるわけは、軍事支援活動を本務とすることを示唆している。
 第二に、日本国憲法第9条に違反することである。政府・与党は、「先に自衛隊派兵ありき」の姿勢を崩さず、「非戦闘地域に限定」とは言うものの、実際にはイラクの大部分の地域で戦闘が続いており、戦闘地域・非戦闘地域の判断は非常に困難な状況である。このような地域に武器を携行した自衛隊を送るならば、まさに首相自らが答弁したように「殺されるかもしれない・殺すかもしれない」という事態、つまり憲法9条で否定する武力行使・交戦が行われる可能性がある。
 第三に、自衛隊の派兵は、米英によるイラク先制攻撃・軍事占領を国連の枠外で支持・支援することになることである。そもそもイラク戦争は、米英が国連憲章・国際法を無視し、世界各国に広がった反戦世論にも目をふさいで、「大量破壊兵器」を大義として仕掛けた戦争であり、決して許されるものではない。現在8000人とも伝えられる犠牲者がでているほか、劣化ウラン弾使用による汚染の影響が心配されており、調査が急務となっている。アナン国連事務総長は、安保理に提出する「イラク問題に関する報告書」で米軍の占領終結やイラク国民自らの統治に向けたとりくみの促進をうたっている。また、ブリクス国連監視検証査察委員長は「(査察委員会が米英による先制攻撃前に行った)3ヶ月半の査察は、終わらせるには早すぎた。」と、査察活動を事実上中断させた米政府を批判している。
 第四に、日本も国際社会からの孤立を深めてしまうということである。ブッシュ大統領が戦争終結宣言をした後も、治安回復・復興支援を国連に委ねず軍事占領し、大量破壊兵器は虚偽であったこと等が検証される中で、「米英両国こそ国際ルールを守るべきで新たなテロ報復を誘発するものである」と、米英は国際的にも痛烈に批判され、孤立化を深めている。今も世界各地でイラク戦争と軍事占領に抗議し、米英の責任を糾弾する集会・デモが世界各地で行われている。日本政府が米英の先制攻撃をいち早く支持し、その後も軍事占領下のイラクに自衛隊を派兵することは、「平和憲法を持つ友好的な国」として親日感情をもっていたイラクをはじめとする中東諸国民にとって、大ききな憤りを持つと同時に、自衛隊を米英同盟軍として見ることは必定である。世界的な反戦・平和の大きなうねりは、米英を孤立させており、この孤立化に日本が加えられる状況をつくってはならない。

 政府・与党は、1978年の福田内閣での研究着手以来26年間、戦時体制の確立を狙い、かつての大戦の反省のもとにつくられた日本国憲法と国家としての自主独立を投げ捨て、米国からの要請に従って軍事体制・有事法制の整備に奔走し、ついに武力行使・交戦、集団的自衛権を禁じた憲法9条を変質させ、「戦争ができる国」として突き進もうとしている。次期国会には、特別措置法という時限立法ではなく恒久法として制定が狙われている。今、日本がするべきことは、国連憲章・国際法、日本国憲法の平和的条項を守り発展させる方向で、自衛隊の海外派兵ではない真の人道復興支援をすることである。私たち長野県教組は「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、有事法制の発動を許さず、自衛隊の海外派兵をさせないために最後までとりくんでいくことを表明するものである。


        2003年7月28日
                  長 野 県 教 職 員 組 合
イラク特措法の採決強行に対する抗議声明