2005年5月13日
長野県教職員組合
長野県高等学校教職員組合
本日長野県教育委員会定例会で、高等学校改革プラン推進委員会(以下「推進委員会」)に検討を依頼する事項を決定しました。これから推進委員会を中心に高等学校改革プラン(以下「改革プラン」)について検討が始まるにあたり、ここに声明を発表します。
第一に、ブロック毎の高校数を明らかにしたことを認めるわけにはいきません。
「県立高校の発展と存続を願う会」や南信州広域連合は、各通学区の高校数を示さないよう県教委や県知事に申入れをしました。私たちも高校数が示されると、これが数値目標として一人歩きしてしまうのではないかと懸念します。ブロック毎に高校教育の将来を議論するためにせっかく設置した検討委員会が、生き残りを競い合う場になってしまう可能性があります。
そもそも「目安としての76校」は、合理的な説明がなされておらず客観的な根拠もなく導き出された数値です。この数字に基づいてブロック毎に高校数を割り振ることを断じて認めることはできません。
加えて県教委は、独立校舎を持った多部制・単位制高校を別立てにして4校設置するとして、公立高校の総数を80校にしました。今回新たに登場した80校という数字がどのような根拠から導き出されたのかも不明です。
第二に、推進委員会という名称が示す通りこの委員会が押しつけられた改革プランを具体化するだけの委員会になりかねないということです。統廃合をどこの学校に押しつけるのか、どこの学校を総合学科に移行させるかなどの議論に委員会が終始してしまうことを懸念します。
高等学校改革プラン検討委員会(以下「検討委員会」)に対して出された批判の多くは、県内の学校関係者を排除し、県民を無視して一方的に統廃合の数字を導き出したことであったことを看過すべきではありません。今回立ち上がる推進委員会にどのようなメンバーが集まり、どのように県下各界・各層間の合意を形成していけるのかが重要です。特に地域高校を抱える自治体から、費用対効果や小規模を理由にした統廃合を強く批判する意見が出ていることは無視できません。
同時にこの推進委員会が県教委の正式な諮問機関として位置づけられなかったことから、意見の言いっぱなしになり、都合の良い意見を県教委が取り入れることにもなりかねません。
今からでも遅くはありません。英断をもって推進委員会という名称を変更し、統廃合だけに縛られない建設的な議論が可能となる委員会となるよう設置要項を改定すべきです。
私たちは今後改革プランを検討するにあたって次のことを強く求めるものです。
第一に本日示された数値は、あくまで「目安」であると同時に、推進委員会で議論をすすめるための「たたき台」「検討材料」であることを推進委員会は絶えず確認すべきです。
高校の統廃合をすすめる数合わせを優先させて、総合学科や多部制・単位制高校設置を利用し、距離的に近い高校や小規模校を統廃合していくことは許されません。推進委員会が、子どもたちの学習権を保障するという視点を中心に置きながら、地域の声を吸い上げて地域の利害を調整し合意を形成できるのかという点に注目したいと考えます。そのためには、県教委の全面的な協力が必要であり、統廃合計画を性急に求めてはなりません。
第二に、一部の委員が勝手に県立高校の将来を決定するのではなく、真に県民参加の議論が保障される委員会にすべきです。その意味では、旧12通学区毎に部会を設置し、車座集会(仮称)のような形態を含めて多くの県民が参加できるような場を設定することが求められています。特に現役の高校生や子どもたちの意見に真摯に耳を傾けることは、極めて重要であると考えます。
旧12通学区は、検討委員会の「最終報告」も指摘しているように、「実質的な生活圏」であり「地域によっては実質的な通学区圏」として機能しています。地域のことは地域が決める、県教委は地域を支援していくという教育の「住民自治」を確立する格好の機会です。
第三に、高校現場に検討する機会を与えずに、一方的に統廃合や新しいタイプの高校の指定を行なわないことです。
現在学校現場は、矢継ぎ早の「教育改革」に振り回されてじっくり腰を落ち着かせて様々な課題について検討する、子どもたちと向き合って子どもたちの声を聞き取る余裕がありません。この上短期間でさらなる「魅力づくり」を提案することを求められても極めて困難です。それも学校の存続にかかわることとなると、高校現場は「生き残り」のための「魅力づくり競争」に巻き込まれることとなります。
高校現場の頭越しに、推進委員会が勝手に新しい学科や統廃合の対象校を決めることは困難ですし、推進委員会が検討委員会が犯した過ちを繰り返してはなりません。
教育現場を信頼し、教職員に対し地域に出向き地域の人々と高校の将来について話し合う機会を保障すること、目先の改革を強制せず、子どもたちの最善の利益に立った地道な教育のあり方を考え検討し合う時間的な余裕を保障することを強く求めるものです。
『未来への提言』(コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命)では、教育制度を「最も大切な社会的共通資本」とした上で、教育を「官僚的に管理したり、あるいは市場的基準を無批判に適用して競争原理を導入するなど粗末に取り扱ってきた結果」教育の諸問題が生起してきたと述べています。しかし現在高校改革プランで実際に進行しているのは、このような事態であると言わざるをえません。
県民に客観的な根拠を示さずに一方的に統廃合の数値を示す、県教育委員会委員長が一部報道で費用対効果論を強調し、高校改革に「ノスタルジーは必要ない」と発言し、地元の高校を愛し支援している人々を傷つけるなど憂慮に耐えません。
推進委員会では、「最終報告」から多少離れても、本年度中という期間に縛られず充分な時間をかけて長野県の教育に対する自由で闊達な議論が展開されることを期待します。特に、30人学級等を導入した場合の学校規模や学校の配置、小規模校での教育の可能性なども検討の対象とすべきです。
私たちは、地域の皆さんの声や願いに真摯に耳を傾け、地域の皆さんとともに歩む学校を創造していきたいと考えています。そして、どの子もどこの高校に行ってもゆき届いた教育を受けられるような高校改革が実現されるように奮闘します。
高等学校改革プラン推進委員会発足にあたっての声明