2006年3月9日

                                                                 長野県教職員組合 高校問題専門委員会

   1.はじめに

  通学区ごとに行われた高校改革プラン推進委員会の報告書がまとめられ、県教育委員会に提出されました。しかし、統廃合および多部制単位制への転換が示された高校関係者及び地元住民からは、存続及び反対の強い声が上がっており、また高校再編に向けた手法に対して疑問の声も上がっています。
  今回の高校改革については、その論議の始まりが県民の要望に基づいたものなのかという点で首を傾けざるを得ません。推進委員会発足のもととなる高校改革プラン検討委員会の報告についても、その論議の経過や結論の出し方については様々な問題点が指摘されています。
  まず、高校改革プラン検討委員会の委員構成は、県内の高校・中学校関係者が不在で、8人の内3人が県外の有識者という異常なものでした。後に懇話会を開設し、地域および各界から意見を聞く場を設けたことは、県教委自身が検討委員会だけでは県民の声を反映した論議にならないことを認めたからといえます。
   旧通学区ごとに行われた意見聴取の地域懇談会やパブリックコメントでも、高校数を減らすことに言及した意見はあまり寄せられておらず、むしろ高校教育の質や教育条件を整備することを求める意見が多く寄せられています。
   検討委員会内で、30人学級も含めた少人数学級が検討されなかったことも不満です。財政問題を優先的にとらえ、ひとクラスの規模は40人のままで議論が進められました。
   検討委員会での資料とされた県民アンケート結果のとらえ方も強引でした。県民が考える高校の適正規模の学級数は、3から4学級が一番多かったのにも関わらず、5から6学級の回答も多かったとし、適性とする学級数の数値を5.5学級とまとめました。
   県民不在の検討委員会の議論の上に出された高校の「再編整備案」をもとに、推進委員会で論議を進めたことに対して改めて異を唱えるものです。

    2.高校改革プランに対する県教委の姿勢について

  県教委から推進委員会に委託された内容は、「1.魅力ある高等学校づくり 2.県立高等学校の再編整備 3.総合学科高校及び多部制・単位制高校の配置 4.その他の関連事項」でした。しかし、6月24日に県教委が突如高校名を記した「高校再編整備案」を発表し、推進委員会の論議が高校の再編整備にシフトされていきました。したがって、推進委員会の「報告書」も再編整備が全体の基調になっています。
  本来なら「1.魅力ある高等学校づくり」にもっと時間をかけて高等学校教育のあり方を議論するべきでした。とりわけ、障害児教育についてはまったく切り離されてしまいました。しかし、現実には軽度発達障害や情緒障害の子どもたちが高校へ進学しています。こうした子どもたちの教育を高校でどう保障するのかについても論ずるべきでした。
  また、県内外のいくつかの高校を視察したようですが、定時制高校はどれだけ視察したのでしょうか。ここは、障害のある生徒や不登校経験の生徒、あるいは外国籍の生徒、学び直しを求めてくる生徒など様々な事情を持った生徒たちの受け皿ともなっています。そして、小規模であるからこそ多様化した生徒の指導面においても有効に機能しているのです。このことを目の当たりにしたならば、多部制単位制高校は定時制高校に代わり得ないと誰もが思うはずです。
   県教委から「再編整備案(たたき台)」が示されて後、県議会においてその撤回の決議がされたり、また推進委員会の結論や県教委の策定の時期についても急ぎすぎるのではないかという意見が多く出されています。しかし、この2月議会においても県教委は一貫してその姿勢を変えようとしていません。また具体的に名前の挙がった高校の同窓会やPTAをはじめとして、高校の存続や多部制単位制への移行に反対し、慎重な対応を求める要請行動が数多く県教委に対して行われています。県教委は想定した結論以外は受け入れようとしない頑なな姿勢をとっています。推進委員会の結論を出す(有識者における論議で方向は出されたとする)ことで、県民の意見も反映されたとし、当初の計画どおりに進めようとする県教委の思惑が見えてなりません。
   さらに推進委員会の報告を受け、地域ごとに説明会が開かれましたが、出された質問や疑問に対しても県教委は誠実に答えていません。これもまた県民への説明は行ったとのアリバイづくり以外の何ものでもありません。説明責任が果たせたとは到底言えるものではありません。

   3.中学生不在の論議 地域や保護者、県民の合意を得た高校改革を

   この間、今年度の高校入試を控えた生徒たちおよび中学校現場からも不安の声が多く上がっています。中学3年生からは、「現在志願を考えている高校がどうなるのかとても心配だ」「これまでと違う高校に変わったら行き場がなくなるんじゃないかとても心配」などの声が数多く寄せられています。
   また、多部制単位制高校がどういう高校かを知っているのはその2割程度の生徒にすぎません。県教委は多部制単位制高校の設置について多くの生徒が望んでいると言っていますが、内容のよくわからない高校を誰が望んでいるのでしょうか。さらに、地元の高校が多部制単位制高校に転換されることを良いことととらえている生徒はわずか2%しかいません。このような状況でどこの高校に多部制単位制を設置するかという論議は、生徒不在の論議であり、生徒のニーズに応えると言っている県教委の言葉は絵空事としか言えません。
   県教委は、慎重に進めることを求める数多くの声があるのにもかかわらず、3月には「実施計画」を出すとしています。このことがいかに現在の中学3年生に大きな影響を与えることか。「自分が志願しようとしている高校がなくなるかもしれない」「自分が希望しているクラブ活動には後輩が入ってこない」、このようなことを考えながら決断せざるを得なかった中学生の心情をどこまで理解しているのでしょうか。具体的な高校名が載る「実施計画」は、2006年度入試が終了し、新しい生活を迎えた4月以降に検討すべきではないでしょうか。仮に実施するとしても、今の中学2年生からなどという乱暴な進め方ではなく、3年後あるいは5年後からの実施として、進路選択に余裕を持った形で進めていくことが中学生にとってどれほど大事なことか、教育行政に携わるものとしての責任が問われます。

   この間県教委は、この論議は財政問題に関わるものではないと言い続けてきました。しかし、多部制単位制高校を作ることにおいては新規にではなく既存の高校が対象であり、また定時制を再編し多部制単位制に統合するとしている点で、まさに「県財政ありき」は否めません。県民から得た税金を、教育のためにまた県民の強い要望に基づいて予算付けしていくことが、行政としてなすべきことであり、まさに県民サービスといえるものです。県教委の姿勢は県民の意識とかけ離れたところにあると言えます。

   以上のような点から私たちは県教委に対し、拙速に高校再編計画を進めるのではなく、県民的な論議に基づき、中学生も含めた県民や地元住民が十分に納得できる高校改革を進めるよう求めるものです。
拙速な高校再編整備計画に反対し、
    県民の合意に基づく高校改革を求める声明